ホーム > アイディアのレシピ -役割をたくさん持とう-

アイディアのレシピ -役割をたくさん持とう-


hachu_title5

 
 人は出会った人の数だけの自分を持っています。同じ自分の中から、家族といる時は「お母さん」、会社にいる時は「〇〇課長」など呼ばれ方も変わりますし、その呼び名から引き出される自分も変わってくるように思うのです。だから役割をたくさん持つということは、それだけ多くの自分を持つということ。自分の新しい一面に気づけるということです。この役割の転換は、日常生活の中で多くの役を演じるような感覚。女優さんや俳優さんが多くの役を演じることによって、多くの人生を疑似体験しているのと同じように、私たちも多くの役割を持つことで、自分のままで新しい役割を楽しめるんです。役割の切り替えは脳の切り替えや刺激にもなるので、Aの役からBの役に変わる時には新たな思考や感情に気づくのではないでしょうか。

 こうやって役割を横断することを楽しみつつ、時にはなんの役割も与えられない場所に行ってみるのもいいかもしれません。最近は「サードプレイス」なんていう呼び方もあり、家、仕事以外の自分を持つことが流行っていますが、たとえば、自分でも自分のどんな面が引き出されるかわからない集まりに参加してみて、どんな自分に出会えるか自分を試してみるのもいい経験になると思うのです。

 こんな提案をしている私自身が、実は役割を与えられない場所がとても苦手です。「はあちゅう」というある程度活発で、自分の意見を強く言う人という大衆のイメージ(あくまで自分で想像しているだけのイメージですが)という役割を与えられている状況であれば、「“はあちゅう”ならどんな風に振舞うかな?」と想像しながら、忠実にその役を演じればいいだけ。でも、素の自分になると、私はたちまち、小学生の頃の引っ込み思案の自分に戻ってしまいます。知らない人同士の場所に、裸の肩書きで飛び込むと自己紹介もうまく出来ず、うまく輪の中に入っていける人を羨ましく思っている自分に気づきます。この瞬間、私の中には、いまだに成長できない子供の部分があるんだな、と感じると同時に、普段は見逃しているささいなことに目が向きます。自分の内面においても、外の環境についても。

 自由演技、つまり役割ナシの自分では、いかに弱く、ちっぽけで、使えないやつかということを噛みしめると、心が打ちのめされます。でも、そのストレス経験が新たなアイディアへと自分をいざなってくれると同時に、他人への寛容さを醸成してくれます。自分の不寛容をみつめることは、そのまま他人の不寛容を受け入れることになりますから。

 ここでは先輩、ここでは後輩、ここでは責任のある人だけど、ここでは甘えキャラ、ここでは強いけど、ここでは弱い…そんな風に自分のあらゆる面を、全身をほぐすように使って感情の転換に慣れると、きっと発想の転換もしやすいと思うのです。

 

アイディアのレシピ

はあちゅう【クリエイティブ】
多数の女性向け商品やサービスをプロディースしてきた【はあちゅう】の、アイディアを生み出すライフハックエッセイ
コラムはこちら

はあちゅう(ブロガー・作家)
1986年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。在学中にブログを使って、「クリスマスまでに彼氏をつくる」「世界一周をタダでする」などのプロジェクトを行い、カリスマ女子大生ブロガーとして活躍。電通、トレンダーズを経てフリーに。「ネット時代の作家のかたちをつくる」ことを目標に、オンラインサロンや月額課金コンテンツ「月刊はあちゅう」の運営など、表現の場所を広げている。近著に「半径5メートルの野望」(講談社)、「かわいくおごられて気持ちよくおごる方法」(幻冬舎)、「とにかくウツなOLの、人生を変える1か月」(角川書店)など。
facebook twitter ブログ


記事一覧