ホーム > 【『道を継ぐ』刊行記念対談】人生に迷ったらカリスマ女性美容師に聞け! Michio Nozawa HAIR SALON Ginza 那須久美子さん(前編)〜教育は教える側のレベルで9割決まる〜

【『道を継ぐ』刊行記念対談】人生に迷ったらカリスマ女性美容師に聞け! Michio Nozawa HAIR SALON Ginza 那須久美子さん(前編)〜教育は教える側のレベルで9割決まる〜


49歳でその生涯を閉じた伝説の美容師・鈴木三枝子さんを描いた『道を継ぐ』(アタシ社)が「私もこんな風に生きたい!」「女友たちみんなに読ませたい!」と大反響。なぜいま、女性美容師の生き方がこれほどまで一般の女性に支持を受けているのでしょうか。『道を継ぐ』の著者の佐藤友美さんと、カリスマ的人気を誇る女性美容師さんの対談連載第5弾です。

※当記事はHAIR(hair.cm)からの転載記事です。(元記事:https://hair.cm/article-36181/

【前編】教育は教える側のレベルで9割決まる

第5回目のゲストは、Michio Nozawa HAIR SALON Ginzaのスタイリスト・那須久美子さん。日本を代表する美容師・野沢道生さんの右腕を務め、今や売り上げNo.1のスタイリスト。モデルや芸能人からの信頼も厚く、ヘアメイクや撮影など幅広く活躍する那須さんにお話を聞きました。

アシスタントは「お手伝い」じゃない

お店の質は「教える人」の質で決まる

佐藤:改まって話をするのは初めてですね。今日はよろしくお願いします。那須さん、『道を継ぐ』を読んだあと、すぐに感想をくれましたよね。

那須:心に響きっぱなしで、読んでいて何度も泣きました。すごく良かったです。

佐藤:印象的だったところは、どの部分ですか?

那須:岡村さん(注・『道を継ぐ』に登場するMINX代表取締役・岡村享央さん)の言葉です。「お店の質は教える人で決まる」という場面がありましたよね。

佐藤:「教育は教える側のレベルで9割決まる」という言葉ですね。

那須:それです!教える人たちがいつまでも努力していれば、後輩たちも負けずに頑張ろうと思える。やっぱり、そうだよなあ、って。
 

那須:実は『道を継ぐ』を読んでいるとき、自分への答え合わせをしているような感覚があったんです。「あ、私、間違ってなかった」とか「ここはまだ足りてないな」とか。
 

男性スタッフに対して女の感情を出したら「負け」

佐藤:那須さんは、後輩にはどんな感じで接してるんですか?

那須:私、「やんちゃ」なスタッフを救うのが好きなんですよ。だから男性アシスタントが多いですね。やんちゃなスタッフって、サロンからすると「使いにくい」と思われやすいんですが、そういうタイプこそ伸ばしてあげたいって思っちゃうんです。

佐藤:なんだかわかる(笑)。那須ちゃん、『ごくせん』のヤンクミみたいな雰囲気、あるもん(笑)。

佐藤:仕事をしている女性には、まさに「やんちゃ」なタイプの指導に悩んでいる人もいると思うんだけれど、どう指導しているんですか?

那須:どんなことも「理論」で語るようにしています。何かを失敗したときなど、なぜこうなったのかを、理詰めで語って絶対反論できないようにする。

佐藤:怖い(笑)。付け入る隙を与えないわけですね。それで、男性スタッフってついてきます?

那須:大事なのは女の感情を出さないこと。出したら「負け」なんです。男性にとって、女の感情論ほど面倒くさいものはないので。だから感情0%、理論100%でずばーっと一刀両断。

佐藤:切れ味良さそうだなあ(笑)。

那須:「わかりました」「すみません」としか言えない状況を作るんです。

佐藤:理論で語るから、納得せざるを得ない、と。

那須:そのためにも、自分の仕事はすべて言語化できなきゃいけないですよね。なぜこの角度で切ったのか、なぜあのお客さまにこういう声かけをしたのか。感覚的な仕事ほど、理論を語ることが大事だと思います。

「お手伝い」じゃなくて「私そのもの」になって

佐藤:そうやって厳しく指導することで、アシスタントさんが離れてしまうことはない?

那須:少なくとも今まではありません。美容師を辞めた子もひとりもいませんね。

佐藤:それはすごい!こんなに離職率の高い職業なのに。何か秘訣があるのかな。

那須:仕事を全部見せてあげるからだと思います。私、自分のアシスタントには、「君たちを絶対にお手伝いだとは思わない」と必ず最初に宣言するようにしているんです。お手伝いじゃなくてプロの美容師なんだと。

佐藤:アシスタント扱いしないんですね。

那須:だから、「私の右腕」になるんじゃなくて「私自身」になってほしいし、私のお客さんを担当する以上は、私と同じことをやってほしいんです。

那須:「自分だったらこうするのに」と思っても、私のお客さんに触れる以上、その感情は全部捨ててくださいって言うんですよ。

佐藤:へええ。

那須:ただし、ひとつだけ例外があって。自分で最大限考えて、私以上の結論を見つけたのであれば、いくらでも言ってきていいんです。たとえ、先輩に反抗する言い方になったとしても、それは全部採用すると伝えています。

佐藤:とてもフェアだし、気持ちのいい関係ですね。

月に一度の食べ放題タイム

佐藤:那須さん、よくSNSに「スタッフが家に泊まりに来た」と投稿してるでしょ。厳しい反面、仲がいいんだなあって。

那須:仕事では厳しく要求するんですが、それに応えてくれている感謝の気持ちを伝えたくて、月に1回、後輩たちがここに行きたいと言ったお店に連れて行く約束をしているんですよ。

佐藤:えっ、どこでもいいの?

那須:そう。10万円でも20万円でも、支払いは私がするから、どこでも連れて行くと。彼らに行きたいお店を決めてもらってます。

佐藤:それは嬉しいでしょうね。

那須:君たちが私の分身として動いてくれたから、今月もお客さんに満足してもらえたし、君たちがいたからこのお客さんはまたリピートしてくれた、ということを毎月実感してほしいんです。

佐藤:男前やあ(笑)。

那須:私のアシスタントだけじゃなくて、自分を一番サポートしてくれたスタッフもひとり選んで連れて来るように言っています。自分も誰かに支えてもらっていることを自覚してもらえたらと思って。

佐藤:やっぱり男前やあ(笑)。でも、お金が心配(笑)。

那須:お金には「生き金」と「死に金」があるって、私も先輩に教わったんですよね。人のために使うのは「生き金」で、これはちゃんと自分に返ってくるって。

佐藤:確かに、価値あるお金の使い方ですね。

「目標」になり続けることで、人も自分も成長できる

自分への支持の大きさで、仕事の出来は変わる

佐藤:那須さんの話を聞いていると、アシスタントさんの教育に、並々ならぬ力を注いでいるのがわかります。

那須:お客さまがサロンで接するのは、私だけではないんですよね。

那須:私は自分のお客さまを、恋人のように親友のように大切に思っているし、一生私が担当したいという気持ちで接するけれど、アシスタントにも同じように思ってほしいんです。

佐藤:美容師に限らず、ほとんどの仕事ってチーム戦ですもんね。自分だけではなく、チームのモチベーションを高めることって大事ですよね。

那須:そのためにも、私自身がアシスタントに圧倒的に支持される存在であることを心がけています。

佐藤:すごくよくわかります。私、初めて雑誌の美容ページを担当したとき、編集さんから「絶対に美容師さんに舐められないで」って言われたんですよ。

佐藤:ライバル誌よりもいいページにするためには、まずあなたが舐められてはいけない。「この人のためなら頑張ろう」って思われるライターになってって。

那須:友美さんの仕事、私たち美容師は、力が入りますよ。

佐藤:那須さんは私との撮影のとき、10人もモデルさんを抑えてくれたことがありましたよね。あれは嬉しかった〜。

那須:ほとんどの人がメールで済ませるモデル選びのやりとりも、友美さん、絶対に打ち合わせに来ますもんね。こちらとしても、友美さんの撮影は、気合が入るんです(笑)。

佐藤:一緒にお仕事する美容師さんが、一番いいモデルを選び、一番時間をかけ、一番力を注いでくれるのが、私との仕事であってほしい。そのためには、何をすればいいか、どうすれば美容師さんに支持してもらえるのか、いつも考えていました。

那須:チームに支持してもらうことが、最終的に仕事の出来につながるんですよね。

佐藤:そう。だから那須さんが一緒に働くスタッフの方々をとにかく大切にしているのがよくわかります。

人に注意する前に、まず自分を振り返る

佐藤:とは言っても、スタッフから支持を得るって簡単じゃないですよね。なにか意識していることはあります?

那須:スタッフのミスや不注意に気づいたとき、たとえどんなに小さなことでも、自分は大丈夫かどうかを確認します。

佐藤:自分のことを棚に上げて指摘されるとイラっとくるもんね。

那須:厳しい言葉をかければ、それだけ自分はサボるわけにはいかなくなるし、ズルもできなくなりますよね。
私、朝礼でいつもその日の全員の目標になる言葉を言うようにしてるんですが、自分が発した言葉は、自分を一番奮い立たせる言葉になるんですよ。

佐藤:言葉は口にした瞬間から「責任」が発生するよね。

那須:後輩たちは、私たちが思っている以上に、いろんなことをシビアに見ています。

佐藤:よくわかります。

那須:そのシビアさに自分も応えなきゃと思うことで、自分も成長するのかもしれないですね。

後編に続く
撮影/中村彰男

※当記事はHAIR(hair.cm)からの転載記事です。(元記事:https://hair.cm/article-36181/

プロフィール

那須久美子(なす・くみこ)

Michio Nozawa HAIR SALON Ginzaクリエイティブディレクター。アシスタント時代から長きにわたり野沢道生さんの右腕を務め、ヘアからメイクまでを担当する、Michio Nozawa HAIR SALON指名売り上げNo.1のスタイリスト。多くのモデルや芸能人からの信頼も厚く、ヘアメイクや撮影、全国でのセミナー活動を行うなど幅広く活躍する。親しみやすい接客と、大人カワイイ品のあるスタイルが人気で、世代を問わず多くの支持を得ている。

佐藤友美(さとう・ゆみ)

日本初のヘアライター&エディター。ファッション誌やヘアカタログの「髪を変えて変身する企画」で撮影したスタイル数は4万人分を超える。「美容師以上に髪の見せ方を知っている」とプロも認める存在で、セミナーや講演を聞いた美容師はのべ2万人を超え、これは全国の美容師の20人に1人の割合にあたる。著書に7万部突破のベストセラーとなった『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)、発売即重版となった『道を継ぐ』などがある。

『道を継ぐ』とは?

49歳でスキルス胃がんによってその生涯を閉じた伝説の美容師・鈴木三枝子を描いたノンフィクション。今なお人々の心に残り、動かし続ける彼女のメッセージとはどのようなものなのか。1年半の歳月をかけ、191人の関係者に取材を敢行した先にたどり着いた「答え」は、働く女性にとって、強く心に響くものがある。「働き方・生き方を見直すきっかけになった」と、年代・世代を超えて感想が寄せられており、業界を超えて大きな反響を巻き起こしている。

「人生に迷ったらカリスマ女性美容師に聞け!」バックナンバーはこちら

過去の連載を読みたい人は画像をクリック!

※当記事はHAIR(hair.cm)からの転載記事です。(元記事:https://hair.cm/article-36181/
※当記事の原稿および画像はHAIRに帰属するため、無断転載・ダウンロードは禁止します。


記事一覧