ホーム > 【『道を継ぐ』刊行記念対談】人生に迷ったらカリスマ女性美容師に聞け! Michio Nozawa HAIR SALON Ginza 那須久美子さん(後編)〜今日死んでもいいって思えるくらい、毎日やりきる〜

【『道を継ぐ』刊行記念対談】人生に迷ったらカリスマ女性美容師に聞け! Michio Nozawa HAIR SALON Ginza 那須久美子さん(後編)〜今日死んでもいいって思えるくらい、毎日やりきる〜


49歳でその生涯を閉じた伝説の美容師・鈴木三枝子さんを描いた『道を継ぐ』(アタシ社)が「私もこんな風に生きたい!」「女友達みんなに読ませたい!」と大反響。なぜいま、女性美容師の生き方がこれほどまで一般の女性に支持を受けているのでしょうか。『道を継ぐ』の著者の佐藤友美さんと、カリスマ的人気を誇る女性美容師さんの対談連載第5弾です。

※当記事はHAIR(hair.cm)からの転載記事です。(元記事:https://hair.cm/article-36184/

【後編】今日死んでもいいって思えるくらい、毎日やりきる

Michio Nozawa HAIR SALON Ginzaのスタイリスト・那須久美子さん。後編では那須さんの過去の意外なエピソードから、話は広がって…。(前編はこちら

コンプレックスがいつの間にか武器になった

コミュニケーションはまず、「自虐ネタ」から

佐藤:那須さんは、お客さまから絶大の支持を得ていますけれど、どんなふうにコミュニケーションしているんですか? 

那須:私、たぶんすごくお客さんのことを知っていると思います。

那須:家族構成から、24時間の過ごし方から。特にその人の悩みや困っていることは、髪を切っている間に全部聞き出すと決めているんですよ。

佐藤:初対面のお客さんもいるし、人見知りする方もいると思うんだけど、限られた時間でどう話を引き出すんですか?

那須:まずは、なんのために話をしてほしいかを説明することです。くだらない笑い話をしたいんじゃなくて、お客さまがどんなものが好きで、これからどうなりたいのかを知りたいんだと。
そうすれば、私はただ髪型を作るんじゃなくて、あなたの人生に変化を与えることができますって。それを伝えるとみなさん結構口を割ってくださるんですよ(笑)。

佐藤:なるほど!

那須:あとは、なるべく「自虐ネタ」を話すようにして、お客さんとの間に距離ができないよう注意しています。

佐藤:敷居を下げて話しやすくするということですね。

那須:意識してるのは、「具体的に自虐する」ことです。「実は昔すごい太ってて、○○キロだったんです」と具体的に数字を出したりして(笑)。ほかにも「昔アフロやドレッドばっかりやっていたので髪がすごく傷んで、最後はベリーショートになった」とか。

佐藤:そう言われると、自分の悩みを打ち明けやすくなりますよね。特に東京の有名店の美容師さんはキラキラしていて、身構えてしまう人もいるだろうから。

那須:そうなんです。だから、まず自虐で笑ってもらいます。そこは大阪育ちだから得意です(笑)。

運命の出会いは、テレビの奥のおばあちゃん

那須:実は私、有名店に気後れしちゃう人の気持ちがよくわかるんです。そもそも私自身が、進学校に通う超ガリ勉で、おしゃれに興味も全然なかったから。

佐藤:那須さんが美容師を選んだきっかけって?

那須:私の師匠である野沢さん(Michio Nozawa HAIR SALON Ginzaの代表・野沢道生氏)の存在ですね。ちょうど大学受験の勉強をしていたとき、たまたまテレビで野沢さんが寝たきりのおばあちゃんの髪の毛を切ってあげている番組を見たんです。
その番組の最後で、野沢さんがおばあちゃんに口紅をつけたんですよね。そしたらおばあちゃんがすごく嬉しそうな顔して、ボロボロ泣いたんです。それを見て私、美容師になろうと決意したんです。

佐藤:そうだったんですね。

那須:だから、そもそも華やかな業界に入りたいと思って美容師になったわけじゃないんですよ。東京にもこだわっていません。それより、ただ人を喜ばせられる人になりたかったんです。

佐藤:たまたま野沢さんが東京にいたから、上京しただけだったんですね。

那須:そう。だから、同期に比べて見た目もめちゃめちゃ地味だったんです。
でもあるとき、野沢さんに「人を喜ばせるためにはお前自身の身なりがちゃんとしてなきゃいけない。自分自身が人から憧れられる存在になりなさい」と言われたんです。

コンプレックスがあるから可愛くなれる

那須:その言葉に、ハッとしたんですよね。というのも、実は私、小さいころから、自分の見た目に対して、コンプレックスだらけだったんです。4000グラムの超巨大児で生まれて、子どもの頃はすごく太っていたし、勉強ばかりしてるガリ勉で、眼鏡もかけていたし。

佐藤:今の那須さんからは全然想像できない…。

那須:自分は「ブスだから」と、容姿に関してはあきらめていたんですよね。でも、「自分自身の見た目に対して、ちゃんと努力しないとお客さんはついてこない」と野沢さんに言われて、生まれ変わろうって思ったんです。

佐藤:そんな過去があったんですね…。

那須:それからは、もう、手当たり次第ですね。元ガリ勉なので勉強は得意で(笑)、情報を集めるのも大好きなんですよ。綺麗になれるという情報があれば、なんでも試してみました。

佐藤:那須さんに書いていただいた自己分析のチャートですが、自己プロデュースが4.5と高めだと思ったんだけど、改めて見ると、コンプレックスがあったからこそ、自分を磨いてきた、ということだったんですね。

那須:今でも自分の顔や体型にコンプレックスはたくさんあるんです。見た目に関して何か言われると心がざわつきます。だけど最近は、そんな自分だからこそ、自分と同じようにコンプレックスを持つ人を可愛くする美容師になれるんじゃないかなって、思うようになって。

佐藤:だからこそ、自虐ネタをお客さまに話したりするんですね。

那須:そうです。コンプレックスの塊だった私が、それを克服してきたからこそ自分を可愛く見せる方法についてはたくさん語れると思っています。

お客さまが「渡したくない友達」になっていく

人のために生きなさい、いつも影武者でいなさい

佐藤:那須さんの話を聞いていると、とにかくお客さまへの強い想いを感じます。

那須:これは母の言葉なんですが、「人のために尽くすことができなければ美容師をやってはいけない」と言われたんですよ。人のために生きなさい、いつも影武者でいなさいって。

佐藤:すてきな言葉ですね。

那須:以前よりお客さんに対しての執着も強くなりました(笑)。お客さんも何十回と来てもらうと、もはや友達みたいになってくるんですよ。フランクの意味の友達じゃなくて、大事にしたい存在という意味です。
そうなると絶対ほかの美容師に渡したくないんです。絶対にまた私のところに切りに来てほしい。どんどん欲が深くなる(笑)。

那須:だからカットの技術でも美容の情報でも、私が何を提供すればまた来てくれるかな、ということをいつも考えているんです。

しゃべり続ける覚悟はあるか

佐藤:それを365日続けるってことは、本当にすごいことですよね。だからこそ支持されるんだろうけれど。

那須:私、スタイリストとしてデビューするときに、野沢さんから「那須さんはよくしゃべるけど、その路線でいいのか」と指摘されたことがあるんです。
それはどういう意味かというと、「風邪をひいて熱が39度出たときも、お客さんに同じテンションでしゃべり続ける覚悟があるのか」ということを確認されたんです。

佐藤:…重い言葉ですね。なんと答えたんですか?

那須:「それは必ず保証します」と宣言しました。その瞬間に、私はいつもお客さんに対して「美容のことをよくしゃべる元気な人」になると決めたんです。これだけはデビューしてから徹底的にやってきています。

「舞台」にいる自分のイメージは、とことん守り抜く

佐藤:体調が悪いときやプライベートがうまくいってないときは?切り替えできます?

那須:私、美容室のフロアは舞台だと思っているんです。舞台に上がるからにはイメージを壊さないようにしています。例えば、私は絶対にすっぴんでは家を出ません。街や電車で偶然お客さんに会ったとしても「サロンにいるいつもの那須さん」でいたいし、「那須さんはいつも元気で、美容のことをなんでも教えてくれるよね」って言われたいんです。

那須:それで、目一杯楽しくおしゃべりして、「あー、今日も楽しかったなあ」って毎日終わりたい。

佐藤:なんだか那須さん、以前よりもお仕事を楽しんでいるように見えますね。

那須:楽しいです。毎日めちゃくちゃ楽しい!私、最近毎日「今日死んでもいいや」って思ってるんですよ。それくらい毎日楽しい。
「そっかー、今日のお客さまが最後だったかー。楽しかったなあ」って思いながら死にたいって思ってます。

佐藤:いいなあ。なんか、私も元気をもらいました。明日から私も頑張ろう。

撮影/中村彰男

対談を終えて

「アマチュアは最高点で評価される。プロは最低点で評価される」という言葉を聞いたことがあります。那須さんの「毎日同じテンションでお客さまに話し続けると宣言した」というエピソードを聞いて、こういう人をプロフェッショナルと呼ぶんだなあと、思いました。
『道を継ぐ』の主人公・鈴木三枝子さんも、最後まで闘病を隠してお客さまに笑顔で接し続けました。鈴木さんも、那須さんも、舞台に立つときは「でも」も「だって」もなし。私が、美容師さんを心から尊敬するのは、こういうところ。(佐藤友美)

※当記事はHAIR(hair.cm)からの転載記事です。(元記事:https://hair.cm/article-36184/

プロフィール

那須久美子(なす・くみこ)

Michio Nozawa HAIR SALON Ginzaクリエイティブディレクター。アシスタント時代から長きにわたり野沢道生さんの右腕を務め、ヘアからメイクまでを担当する、Michio Nozawa HAIR SALON指名売り上げNo.1のスタイリスト。多くのモデルや芸能人からの信頼も厚く、ヘアメイクや撮影、全国でのセミナー活動を行うなど幅広く活躍する。親しみやすい接客と、大人カワイイ品のあるスタイルが人気で、世代を問わず多くの支持を得ている。

佐藤友美(さとう・ゆみ)

日本初のヘアライター&エディター。ファッション誌やヘアカタログの「髪を変えて変身する企画」で撮影したスタイル数は4万人分を超える。「美容師以上に髪の見せ方を知っている」とプロも認める存在で、セミナーや講演を聞いた美容師はのべ2万人を超え、これは全国の美容師の20人に1人の割合にあたる。著書に7万部突破のベストセラーとなった『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)、発売即重版となった『道を継ぐ』などがある。

『道を継ぐ』とは?

49歳でスキルス胃がんによってその生涯を閉じた伝説の美容師・鈴木三枝子を描いたノンフィクション。今なお人々の心に残り、動かし続ける彼女のメッセージとはどのようなものなのか。1年半の歳月をかけ、191人の関係者に取材を敢行した先にたどり着いた「答え」は、働く女性にとって、強く心に響くものがある。「働き方・生き方を見直すきっかけになった」と、年代・世代を超えて感想が寄せられており、業界を超えて大きな反響を巻き起こしている。

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※当記事はHAIR(hair.cm)からの転載記事です。(元記事:https://hair.cm/article-36184/
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