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書籍「ファンベース」の大ヒットに見る時代性


スタッフと既存顧客からはじめるファンベース

この連載の1回目では、「圧倒的絶望的情報量の中で、どうお客さまに想いを届けるか」について書かせていただきました。

まずは、いまいるお客さまを徹底的に大切にして、家族や友人や同僚に話したくなる店にすること。
そして、いまいるスタッフを徹底的に大切にして、家族や友人や後輩に話したくなる店にすること。
そこから、新しい顧客の集客やリクルートがスタートする。そんな本質的な考え方に立ち戻るのがファンベースです。

この「ファンベース」という考え方を提唱したのが、私の師匠でもある、コミュニケーション・ディレクターの佐藤尚之(さとなお)さん。そのさとなおさんが、先月その名も『ファンベース〜支持され、愛され、長く売れ続けるために』(ちくま文庫)という本を出版されました。

この本では、ファン(既存顧客)の支持を強くするためには、3つのアプローチが重要だと書かれています。

ひとつめはファンの「共感」を強くすること。
これは、新規顧客よりもファンを優先し、ファンであることに自信を持ってもらうことなどが含まれます。
集客サイトに頼らずに、上手に口コミを広げているサロンさんは、リピートのお客さまに対して、優先的なサービスをしています。以前紹介したファン感謝祭などもそうですが、すでにファンになってくれている既存顧客を大事にすることこそが、新規顧客へのアプローチになっていくのです。

ふたつめはファンの「愛着」を強くすること。
これは、商品などの開発背景や商品にまつわるストーリーを公開するなどがあげられます。
これもやはり、美容業界と相性のよい施策になると思います。
たとえば、あるスタイリストさんのデビューまでの秘話、どうして美容師になり、どう社会に貢献しようと思ったのかなどを顧客に積極的に開示していくと、顧客はその店や美容師さんに愛着を持ちはじめます。
そうなると、単に「美容師対顧客」の関係性ではなく「人対人」の関係性が生まれ、長い付き合いにつながっていきます。
例えば、いま、日本で最も勢いがあると言われるOCEAN TOKYOさんなどは、スタッフさんの想いを徹底的に開示していくことで、顧客に強い愛着を持たれるようになっていると感じます。

3つめは、「信頼」を強くすること。これは、顧客に対して誠実に本業の細部を見せたり、社員を自社の最強のファンにしていくことなどがあげられます。
この部分を読んだとき、私は産休育休あけのスタッフさんが、どのように会社に復帰して働いているかを、お客さまに発信して共有している代々木公園の美容院、スプラッシュさんのことを思い出しました。
社員全員の協力のもと、小さな赤ちゃんを抱えてサロンに立つスタッフさんの物語を発信していことは、お客さまの信頼にもつながりますし、社員が「このサロンで働けてよかった」と思える機会にもなっていたと感じます。
こういった「信頼」を築いていくことが、代わりのきかないサロン、代わりのきかない美容師になっていく道筋なのだと感じます。

この書籍『ファンベース』ですが、発売後すぐに重版がかかり、大ヒット中なのだそうです。あらゆる業界で「ファンベース」の考え方が重要な時代になっているのだと感じました。

さとなおさんは日頃から、「サロンという場でコミュニケーションができる美容院ほど『ファンベース』の考え方がなじみやすい業界はない」とおっしゃっています。
すでに美容業界での成功事例もたくさん生まれている「ファンベース」。ぜひ皆さんのサロンでも取り組んでみられてはいかがでしょうか。

 

 

スタッフと既存顧客からはじめるファンベース

佐藤友美(美容ライター)【マーケティング/経営】
著書『女の運命は髪で変わる』で話題の美容ライター佐藤友美が、今美容室が取り組むべき”伝わらない時代のコミュニケーション”「ファンベース」にフォーカスしたコラム。
コラムはこちら

佐藤友美(さとゆみ・美容ライター)
日本初、かつ唯一のヘアライター&エディター。MINXの故鈴木三枝子さんについて関係者191名に取材してまとめた最新著作『道を継ぐ』が、美容業界を超えて話題に。また、『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)は、NHK「あさイチ」でも特集され、7万部の大ヒットに。「美容業界と一般のお客さまの橋渡しになる」ことをミッションに、数々の企画を担当する。
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