今回で最終回となる「スタッフと既存顧客からはじめるファンベース」。
いろんな事例をご紹介してきましたが、最後は、「ファンベース」の観点から、私がもし美容師さんだったら、どんなことに取り組んでみるかについて考えてみました。
1)家でのスタイリングを教える(有料で)
一般のお客さま向けの講演にいくと、よく聞かれる質問が「アレンジを教えてくれる(セットをしてくれるという意味ではない)サロンはありませんか?」「スタイリング(アイロンやドライヤーの使い方)をレクチャーしてくれるサロンはありませんか?」という質問。無料じゃなくて、お金を払ってでもいいから、一生もののアレンジやスタイリング方法を覚えたいという人たちはいっぱいいるのです。
他のお客さまを待たせて無料でスタイリングを教えることはできなくても、カット料金と同じお値段でレクチャーするのはアリではないでしょうか。需要は結構あります。
2)筆談を取り入れる
面と向かって美容師さんに言いにくいことも、施術前のアンケートなどがあれば(そして丸をつけるだけくらいなら)、伝えやすいもの。
- 前回の髪型のスタイリングが難しかった
- 前回の髪型で気になるところがあった
- 最近ちょっと髪型にマンネリぎみ
- 相談したいことがある
……などなど。
例えばこのような項目がいくつか並んでいたら、丸をつけやすいし、それをもとに会話もしやすいはずです。
お客さまは意外と美容師さんに遠慮をしているもの。その遠慮を放置して失客するくらいなら、「ちょっと気になっている」くらいの時点で相談してもらって、生涯顧客になってもらいましょう。
3)悩みを気軽に相談できる場を作る
twitterアカウントや、LINE@など、オフィシャルに運営できるアカウントで、お客さまが気軽に悩み相談できる場を作ってはどうでしょうか。
お客さまに聞くと、普段の施術中は忙しそうだから、あまり気楽に相談できないと聞きます。そうであれば、サロンが忙しくない時に返信できる、オンラインのコミュニケーションツールを使うのも手です。
365日のうち、サロンに来店していない360日のヘアスタイルに対しても責任を持ってくれる美容師さんと思ってもらえたら、そのお客さまにとっても特別な存在になるのではないでしょうか。
この連載の最初の回でお話したように、今の時代、ただの情報はまったく目に入っていきません。「選ばれる」存在になるためには、既存顧客からの強い後押しや口コミが必須です。
既存顧客とともに、サロンを育てていくくらいの気持ちで、ぜひファンベースを実践していってください。
【マーケティング/経営】
著書『女の運命は髪で変わる』で話題の美容ライター佐藤友美が、今美容室が取り組むべき”伝わらない時代のコミュニケーション”「ファンベース」にフォーカスしたコラム。
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日本初、かつ唯一のヘアライター&エディター。MINXの故鈴木三枝子さんについて関係者191名に取材してまとめた最新著作『道を継ぐ』が、美容業界を超えて話題に。また、『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)は、NHK「あさイチ」でも特集され、7万部の大ヒットに。「美容業界と一般のお客さまの橋渡しになる」ことをミッションに、数々の企画を担当する。

